職業経験不足や転職歴の多さなどで就職に困難を抱える求職者の雇用機会を創出するため、国が推進している制度「トライアル雇用助成金」。この記事では、事業主の皆様に向けて、制度の概要から申請方法まで、わかりやすく解説いたします。
トライアル雇用助成金とは
トライアル雇用助成金は、厚生労働省が運営する雇用関係助成金の一つです。職業経験の不足などから就職が困難な求職者を、無期雇用契約への移行を前提として、原則3か月間の試行雇用(トライアル雇用)を行う事業主に対して助成金を支給する制度です。
制度の目的
- 求職者の早期就職の実現
- 雇用機会の創出
- 職業経験不足による就職困難者の支援
- 事業主の人材確保リスクの軽減
主な受給要件
対象となる労働者の条件

基本要件(すべて該当)
- 週30時間以上の無期雇用を希望し、トライアル雇用制度を理解・希望している者
- ハローワーク等に求職申込をしている者
- 紹介日において安定した職業に就いていない者
- 特定の条件のいずれかに該当する者
特定条件(いずれか1つに該当)
- 過去2年以内に2回以上の離職・転職歴がある
- 離職期間が1年を超えている
- 妊娠・出産・育児を理由に離職し、1年以上安定した職業に就いていない
- 1968年4月2日以降生まれで、担当者制による個別支援を受けている
- 特別な配慮を要する者(生活保護受給者、母子・父子家庭、日雇労働者、季節労働者、中国残留邦人等永住帰国者、ホームレス、住居喪失不安定就労者、生活困窮者)
雇入れの条件
- ハローワーク等の紹介により雇入れ
- 原則3か月のトライアル雇用を実施
- 週30時間以上の勤務(一部対象者は20時間以上)
最新の対象労働者拡充情報
ウクライナ避難民(令和4年5月30日〜)
令和4年5月30日から、ウクライナ避難民もトライアル雇用助成金の対象となりました。
補完的保護対象者(令和5年12月1日〜)
令和5年12月1日から、補完的保護対象者も対象に追加されています。
支給額・支給期間
支給額
- 基本額:月額4万円(1人当たり)
- 増額対象:母子家庭の母・父子家庭の父は月額5万円
支給期間
- 最長3か月間(雇入れの日から1か月単位)
- 最大支給額:12万円(増額対象者は15万円)
支給額の減額条件

実際の就労日数に応じて支給額が調整されます:
就労率 | 月額(通常) | 月額(増額対象) |
---|---|---|
75%以上 | 40,000円 | 50,000円 |
50%以上75%未満 | 30,000円 | 37,500円 |
25%以上50%未満 | 20,000円 | 25,000円 |
0%超25%未満 | 10,000円 | 12,500円 |
0% | 0円 | 0円 |
申請手続きの流れ
1. 求人申込み
ハローワークに「トライアル雇用求人」として求人を申し込みます。
2. 面接・採用
ハローワーク等からの紹介により求職者と面接を行い、採用を決定します。
3. トライアル雇用開始
雇用契約を締結し、トライアル雇用を開始します。
4. 実施計画書の提出
雇用開始から2週間以内に「トライアル雇用実施計画書」をハローワークに提出します。
5. 無期雇用への移行判断
3か月のトライアル期間中または期間終了時に、無期雇用契約への移行を判断します。
6. 支給申請
トライアル雇用終了日の翌日から2か月以内に「結果報告書兼支給申請書」を管轄のハローワークまたは労働局に提出します。
7. 助成金支給
審査完了後(通常2〜3か月)、助成金が振り込まれます。
申請時の注意点
申請期限厳守
- 実施計画書:雇用開始から2週間以内
- 支給申請書:終了日翌日から2か月以内
期限を過ぎると助成金を受給できなくなります。
必要書類の準備
- 雇用契約書
- 労働条件通知書
- 出勤簿・賃金台帳
- 健康保険・厚生年金保険被保険者資格取得確認通知書
電子申請も可能
厚生労働省の電子申請システムを利用することで、オンラインでの申請も可能です。
制度の変更点
新型コロナウイルス感染症対応(短時間)トライアルコース
令和5年3月31日で廃止となりました。令和5年4月1日以降の紹介分は対象外です。
事業主のメリット
- 採用リスクの軽減:3か月間のお試し期間で適性を判断
- 助成金の受給:最大12〜15万円の助成
- 人材確保の機会:就職困難者の中から優秀な人材を発見
- 社会貢献:雇用機会の創出による社会貢献
まとめ
トライアル雇用助成金は、事業主にとって人材確保のリスクを軽減しながら、社会貢献もできる有効な制度です。申請手続きは比較的簡単で、条件を満たせば確実に受給できる助成金の一つです。
人材採用をお考えの事業主の皆様は、ぜひこの制度の活用をご検討ください。詳細については、最寄りのハローワークまでお問い合わせください。
参考情報
本記事の情報は2024年5月時点のものです。最新の情報については、厚生労働省のウェブサイトまたは最寄りのハローワークでご確認ください。