補助金・助成金の基礎知識

目次

はじめに

中小企業経営において、資金調達は常に大きな課題です。特に新規事業への挑戦や設備投資、人材育成などを行う際には、まとまった資金が必要となります。そんな時に頼りになるのが、政府や自治体が提供する「補助金」や「助成金」です。

しかし、「補助金と助成金の違いがわからない」「どんな制度があるのか知らない」という声も少なくありません。この記事では、補助金・助成金の基本的な知識から申請方法まで、中小企業の経営者や担当者の方に向けてわかりやすく解説します。

補助金と助成金の違い

まず押さえておきたいのが、「補助金」と「助成金」の違いです。名称は似ていますが、目的や仕組みには明確な違いがあります。

補助金とは

補助金は、国や地方自治体の政策目標に合わせて、事業者の特定の取り組みをサポートするために資金の一部を給付する制度です。主に「事業」に対する支援を目的としています。

補助金の主な特徴:

  • 経済産業省など、政府の政策を推進するために交付
  • 審査があり、競争性が高い(申請しても必ず受給できるわけではない)
  • 支給額は数百万円〜数千万円と比較的高額
  • 公募期間が限定的(1ヶ月程度)
  • 事業の発展や設備投資など、「モノ」に対する支援が中心

助成金とは

助成金は、一定の条件を満たした事業者に対して支給される制度です。主に「ヒト」に対する支援を目的としています。

助成金の主な特徴:

  • 厚生労働省など、雇用や労働環境の整備を促進するために交付
  • 条件を満たせばほぼ確実に受給できる(審査ではなく要件確認)
  • 支給額は数十万円〜数百万円程度
  • 通年で申請可能なものが多い
  • 従業員の雇用や教育、労働環境の改善など、「ヒト」に対する支援が中心

主な補助金制度

現在、中小企業が活用できる主要な補助金制度をご紹介します。

1. 省力化投資補助金

中小企業の売上拡大や生産性向上を後押しするため、IoT、ロボットなどの人手不足解消に効果がある汎用製品の導入をサポートします。

2. ものづくり補助金

ものづくりやサービスの新事業を創出するために、革新的な設備投資やサービス開発、試作品の開発などをサポートします。製造業だけでなく、幅広い業種が対象となります。

3. IT導入補助金

業務効率化や生産性向上のためのITツール導入費用を補助します。会計ソフトやCRM、ECサイト構築などのデジタル化を支援します。

4. 小規模事業者持続化補助金

小規模事業者が作成した経営計画に基づく販路開拓の取り組み(チラシ作成やHP制作、展示会出展など)を支援します。比較的申請しやすい補助金として知られています。

5. 事業承継・M&A補助金

後継者不在などの課題を抱える中小企業の事業承継やM&Aに関する費用を支援します。事業承継後の新たな取り組みや、M&A時の専門家活用費用などが対象です。

6. 新事業進出補助金

既存事業とは異なる新市場や高付加価値事業への進出にかかる設備投資などを支援します。

7. 成長加速化補助金

飛躍的成長を目指す中小企業の大規模な設備投資を補助します。売上高100億円への成長を目指す意欲的な企業を対象としています。

主な助成金制度

一方、雇用や労働環境に関連した代表的な助成金には次のようなものがあります。

1. キャリアアップ助成金

非正規雇用の従業員を正社員に転換したり、賃金アップしたりした場合に受給できます。

2. トライアル雇用助成金

一定期間試行雇用した場合に支給される助成金で、ミスマッチのリスク軽減を図ります。

3. 人材確保等支援助成金

従業員の雇用管理制度や労働環境の改善を図る事業主を支援します。

4. 人材開発支援助成金

従業員の訓練や教育に関する費用を助成します。

5. 両立支援等助成金

子育てや介護と仕事の両立支援に取り組む企業に対して支給されます。

6. 業務改善助成金

最低賃金の引き上げに取り組む中小企業を支援する助成金です。

補助金・助成金の申請から受給までの流れ

補助金を受け取るまでの一般的な流れは次のようになります。

1. 知る

まずは自社の事業とマッチする補助金を探しましょう。政府機関のウェブサイト(ミラサポPlusなど)や商工会議所などで情報収集できます。

2. 申請する

公募要領を確認の上、申請書類一式を事務局に提出します。電子申請または郵送での提出となります。

3. 採択される

審査を経て採択されると、結果が通知されます。その後、交付申請の手続きを行います。

4. 事業の実施

交付決定された内容に基づいて事業を実施します。経費の領収書や証拠書類はすべて保管しておくことが重要です。

5. 補助金の交付

事業完了後、実績報告書を提出し、事業内容や経費が確認されると補助金が支給されます。

申請時の注意点

補助金・助成金を申請する際の主な注意点は以下の通りです。

  1. 事前準備が重要:公募開始後では準備時間が足りないことも。早めの情報収集を心がけましょう。
  2. 全額補助ではない:多くの補助金は経費の一部(1/2〜2/3程度)のみの補助となります。自己資金の準備も必要です。
  3. 後払いが原則:補助金は基本的に事業実施後の精算払いです。事業を遂行できる資金力が必要です。
  4. 書類保管は必須:証拠書類は事業終了後も5年間保管する必要があります。
  5. 計画変更には手続きが必要:採択後に事業内容を変更する場合は、事前に所定の手続きが必要です。

専門家のサポートを活用しよう

補助金・助成金の申請は複雑で、時間と手間がかかることもあります。特に初めての場合は、以下のような支援機関や専門家のサポートを検討するとよいでしょう。

  • 商工会・商工会議所
  • よろず支援拠点
  • 認定支援機関(金融機関や税理士など)
  • 補助金申請の専門コンサルタント

まとめ

補助金・助成金は返済不要の資金として、中小企業の成長を支える重要なツールです。ただし、その種類や申請条件は多岐にわたり、定期的に制度が変更されることもあります。

自社の事業計画や経営課題を明確にした上で、目的に合った制度を選び、計画的に申請することが大切です。補助金・助成金を上手に活用して、ビジネスの成長と発展につなげましょう。


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